2025.12.01
矢田寺の「かぼちゃ供養」で無病息災
12月に入り、本格的な冬の足音が聞こえ始めました。
今年も残すところあとわずかとなり、
京都の街も師走の慌ただしさに包まれています。
12月の京都の行事といえば、除夜の鐘や煤払いなどが有名ですが、
今月は冬至にちなんだユニークな行事「かぼちゃ供養」で知られる「矢田寺」をご紹介したいと思います。
地元の方や観光客で賑わう京都の繁華街、寺町通り。その一角にひっそりと鎮座するのが矢田寺です。
商店街の中の一軒のような佇まいで、急に現れるのがなんとも面白いのですが、
一歩足を踏み入れると世界が変わります。
祀られているのは「代受苦(だいじゅく)地蔵」と呼ばれる地蔵菩薩。
このお地蔵様は人々の苦しみを代わりに受けてくださるそうで、
ご利益は安産祈願・子孫繁栄・病患悉除・万霊供養だとされていますが、
「愛の苦しみも代わる」ことから、近年では良縁成就を願う方も多いようです。
矢田寺の正式名称は「金剛山矢田寺」といい、西山浄土宗のお寺です。
白鳳4年(700年)、天武・持統天皇の勅願所として、
奈良・大和郡山市にあるあじさいで有名な「矢田寺」の別院として創建されました。
その後、火災などに見舞われ、寺地を転々と移りましたが、天正7年(1579年)、
豊臣秀吉の命により、現在の地へと移りました。
本尊の「代受苦(だいじゅく)地蔵」と呼ばれる地蔵菩薩立像は、
高さ5尺2寸(170センチメートルほど)の立像で、優しく穏やかな表情をされています。
矢田寺を開山した、満慶(まんけい)・満米(まんまい)上人が冥土へ招かれた際、
「成仏できなかった者を救っている生身の地蔵菩薩を目にした」といわれており、
その生身の地蔵菩薩と等身大の地蔵が「矢田地蔵」といわれています。
これらの背景により、人の苦しみを代わりに受けてくださる「代受苦(だいじゅく)地蔵」と呼ばれ、
地獄で亡者を救う地蔵として人々の信仰を集めています。
また、京都ではお盆になると、ご先祖様が迷うことなく家族のもとに帰って来られるよう「迎え鐘」をつきますが、
これに対して矢田寺は、ご先祖様が無事にあの世に帰れるようにと8月16日につく「送り鐘」が有名です。
そんな矢田寺では年の瀬も迫る12月23日、冬至の日に「かぼちゃ供養」という行事が執り行われます。
冬至の日にかぼちゃを食べると中風除け・諸病退散のご利益があるとされ、
無病息災を祈願し、回向された大きなかぼちゃが奉納されます。
参拝者はこの大かぼちゃを撫でて手を合わせることで、一年間の無事と、来る年の健康を祈願します。
また、以前は甘辛く煮たかぼちゃの無料接待(かぼちゃ炊き)が振る舞われていましたが、
近年は、持ち帰り用の煮かぼちゃの授与や、重要文化財「矢田地蔵縁起絵巻」の絵解き法話会
(事前予約制・持ち帰りかぼちゃ付き)が行われており、多くの人に人気を呼んでいます。
忙しい師走の時期にほくほくの煮かぼちゃをいただくことで、心も体も温まることでしょう。
ぜひこの機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。
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