2026.03.01
世界遺産に国宝。『鳥獣人物戯画』ほか名宝を擁する高山寺
2週間前には積もるほどの雪が降っていた京都ですが、
今週は一気に空気が緩んで春の気配が漂い始め、
他府県では1ヶ月ほど早く河津桜の開花が報告されるなど、全国的に早い春が始まりそうです。
今月は、1994年にユネスコ世界遺産に登録された「高山寺(こうさんじ)」をご紹介したいと思います。
市内の喧騒を離れた北西の山里・栂尾(とがのお)に佇む高山寺は、奈良時代774年に創建された由緒ある古刹です。
1206年に明恵(みょうえ)上人が後鳥羽上皇よりその寺域を賜り、名を高山寺として再興されました。
明恵上人は「阿留辺畿夜宇和(あるべきようわ)」、すなわち「人はあるべき姿であるべきだ」という、
地位や名誉に囚われない純粋な信念を貫いた高僧として知られています。
まず高山寺といえば国宝8点、重要文化財1万点余りを所蔵しており
その中でも誰もが一度は目にしたことがある国宝、紙本墨画の絵巻物「鳥獣人物戯画」が有名です。
ウサギやカエルが相撲を取り、猿が追いかけっこをするその姿は漫画のルーツとも言われています。
甲・乙・丙・丁の全4巻からなり、各巻で内容が異なるのが特徴で、
擬人化された動物たちや人間風俗模様が、それぞれ描かれています。
中でも甲巻が有名で、躍動感あふれる動物たちの遊戯が描かれています。
もう一つの見どころ「石水院」は明恵上人時代の唯一の遺構として伝わり、国宝に指定されています。
希少な鎌倉時代の寝殿造風建築としても知られていましたが、1889年に現在地へ移築され、住宅様式に改変されました。
木造の優雅な造りはもちろん、周囲を取り囲む自然との調和が見どころです。
特に秋になると、周囲に広がる木々が一斉に色づき、赤や黄色、オレンジの鮮やかなグラデーションに包まれます。
広く開け放たれた南縁の前に広がる山々が見事な借景になっており、
新緑や紅葉、雪景色と四季折々の表情を味わうことができ、訪れる人々の人気を集めています。
また、石水院の西正面にある「廂の間(ひさしのま)」には、
中心に小さな善財童子像(ぜんざいどうじぞう)が置かれており、非常に幻想的な空間に仕上がっています。
また、吊り上げの蔀戸・菱格子戸などによって、内外の境界が曖昧にされているのも特徴で、
深い軒の生む翳りの先に、光が美しく溢れている様子がとても素敵な場所です。
さらに、栄西禅師から贈られたお茶の実を栽培し、苗が宇治へと伝わったことから
お茶の発祥地としても知られています。
そんな高山寺では3月末までの期間限定で、執事の案内による「国宝 鳥獣人物戯画」「国宝 石水院」をはじめ、
開祖・明恵上人が伝えた日本最古の茶園、通常非公開のお茶室「遺香庵」などの特別拝観を開催しています。
期間中は執事が「鳥獣人物戯画」の背景にある成立の過程や技法など詳しく紹介してくださいます。
拝観後は、書院にてお抹茶と和菓子で一服もできるとのことです。
新しい季節の始まりに、ぜひ春の特別拝観で、
歴史の深みと生命力あふれる物語に浸ってみてはいかがでしょうか。



















