2025.11.01
300体の狸に迎えられる山寺「狸谷山不動院」
長すぎた残暑がようやくおさまり、11月に入ってから急に秋が訪れましたね。
色づくタイミングを逃した紅葉がようやく色づき始め、お出かけが楽しい季節になりました。
澄んだ空気の中、食や美術、旅行や読書など趣味を満喫したい今日この頃です。
さて、本日はこの深まりつつある秋の季節にぜひお勧めしたい「狸谷山不動院」をご紹介したいと思います。
狸谷山不動院は紅葉の名所としても有名な一乗寺エリアの山奥にひっそりと佇む真言宗修験道の大本山です。
「タヌキダニのお不動さん」として地元で親しまれていますが、
その名称は「他を抜く」にご利益があることから商売繁盛やスポーツ選手の信仰も集めるパワースポットです。
その他、厄除け、ガン封じ、交通安全なども有名です。
オレンジ色で「狸谷山」と書かれたステッカーを車に貼られているのを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
はじまりは享保3年(1718年)、ひとりの僧・木食正禅上人(もくじきしょうぜんしょうにん)が
木食行を実践するにはどうしたらいいかと考えていたところ、
京都の一乗寺村の狸谷にちょうどよい高さの洞窟があると聞きました。
この洞窟に不動明王の石像を安置し、修行したことに始まります。
当時は階段もなく、ひたすら山に登ってたどり着くその場所に、様々な人が相談に来たそうです。
その騒ぎを聞きつけた江戸幕府が下山命令を出しました。
仕方なく上人は狸谷から降ろされ、その後は清水寺の下にある「安祥院」というお寺で何年か過ごされたそうです。
上人が下山後も狸谷山不動院にご本尊はそのまま残されましたが、
木食正禅上人をしたって来られていた方々に信仰心が芽生え、
上人不在後も狸谷にお参りするようになりました。
以後、村の人たちやお参りする人たちによって大切に守られてきました。
昭和19年(1944年)230年の時を経て、寺法が定められ、
真言宗修験道大本山 狸谷山不動院として中興開山しました。
洞窟内の御本尊・不動明王像を守るため旧本堂や諸堂が建てられ、山道に石段が整備されました。
その為、お寺としての歴史はまだ新しく、今年で中興開山81年を迎えます。
現在の本堂は、昭和61年(1986)に建てられたもので、清水寺の“清水の舞台”と同じ懸崖造り(けんがいづくり)。
山の斜面からせり出すように建つ光景が印象的です。
狸谷山不動院はその知名度の一方で、たどり着くまでの道のりは険しく、
特に車がないと簡単には行きにくい場所にあり、最後に待つ250段の長い階段はなかなか大変です。
車やタクシー利用の方は、250段の階段のすぐ下の無料駐車場まで行くと楽ですが、
足腰に自信のある方は是非、麓の「一乗寺下り松」の急な坂道から徒歩で登ってみてください。
今も残る蔵や町屋の風情ある街並み、剣豪宮本武蔵と吉岡一門との戦いの舞台となった一乗寺下り松に八大神社、降魔不動明王、有名な詩仙堂を堪能することができます。
是非ハイキングシューズで気合を入れて挑んでみてください。
また、参道を含め、境内の至る所にある狸の置物はその数約300体ほど。
これらはすべて参拝者が置いていったものだそう。狸たちの表情が普通の置物よりも生き生きとしているように感じるのは、
人々の「お不動さん」への想いが込められているからかもしれません。
そして、この時期に狸谷山不動院を訪れるなら、11月3日に行われる「秋まつり・おつながり参拝」は見逃せません。
この日は狸谷山不動院の立教開山を記念する日で、山伏による勇壮な野外大護摩供(柴灯護摩)が厳かに執り行われます。
特に注目すべきは、本堂奥深くに鎮座するご本尊・不動明王の右手の剣に結び付けられた白い布が、
護摩道場まで引き寄せられる「おつながり参拝」です。
この布に触れて祈りを捧げることで、お不動様と参拝者が一本の線で結ばれ、仏縁をいただくという、
年に一度の尊い行事となっています。
是非この機会に狸谷山不動院で、その荘厳な山の気配を全身で感じてみてはいかがでしょうか。
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